「ないなら、つくろう。」
20年以上、植物と香りに向き合い、芳香療法や植物蒸留を伝え続けてきました。
アロマスクールでは数多くの生徒さんと植物の魅力を分かち合い、企業や宿泊施設、クリニックなどへ香りの提案を行いながら、「植物は、暮らしをもっと豊かにしてくれる」ということを伝え続けてきました。
そんな活動の中で、いつも感じていたことがあります。
「植物蒸留は、もっと身近なものになれるはず。」
教室で蒸留を体験した生徒さんからは、「家でもやってみたい。」「庭のハーブを蒸留してみたい。」「子どもと一緒に楽しみたい。」そんな声を何度もいただいてきました。
けれど、家庭で使える蒸留器は種類が少なく、高価なものや扱いが難しいものがほとんどでした。機能性はあっても美しさに欠けたり、見た目は良くても蒸留効率に納得できなかったり。
「これなら自信を持っておすすめできる。」そう思える一台に、なかなか出会えなかったのです。
ちょうどその頃、私は湘南から熊本・南阿蘇へ移住しました。
四季折々の植物に囲まれ、水を汲み、土に触れ、植物とともに暮らす日々。毎日の暮らしの中で、植物は「飾るもの」でも「学ぶもの」でもなく、暮らしを支えてくれる存在になっていきました。
この土地で過ごす時間が、本当に届けたいものを教えてくれました。それは、「植物蒸留」という技術ではなく、植物と暮らす豊かさでした。
そして同じ頃、一冊の本を書き始めました。『蒸留からはじめるハーブのある暮らし』。植物蒸留の魅力を、一人でも多くの方へ届けたい。そんな思いで執筆を進める中で、あることに気づきます。
本を読むだけでは伝えられないものがある。植物を摘み、湯気が立ちのぼり、一滴ずつ蒸留水が生まれる瞬間。その感動は、実際に体験してこそ伝わるものだと。
「ないなら、つくろう。」
そう決めて始まった蒸留器づくり。試作を重ねること約3年。ガラスの形状や冷却構造、蒸留効率、使いやすさ、美しさまで、一つひとつ妥協することなく設計を見直してきました。
目指したのは、専門家のための道具ではありません。植物が好きな人なら誰もが、暮らしの中で気軽に蒸留を楽しめること。そして、使っていない時間さえ美しいと思える佇まいであること。
こうして生まれたのが、SOMAです。
SOMAは、蒸留器を販売するためにつくったプロダクトではありません。植物を育て、その恵みを最後の一滴まで暮らしに生かす。そんな新しい文化を、次の世代へつないでいくための道具です。
この一台から、日本中の庭先やベランダ、キッチンやサロンに、植物を蒸留する風景が広がっていくことを願っています。